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ヨガについてもっと知りたい方のために

ヨガはアートであり、サイエンスであり、フィロソフィーです。宗教とは異なるものです。ヨガは、こころ・からだ・たましいに働きかけます。人のからだ全体を見渡し、それぞれの部分がもっとも根本的なところで調和するように、働きかけるのです。もっとも根本的なところ---そこには、内なるまなざしが宿っていています。ヨガの語源は、サンスクリット語の「ユグ」、結び目、あるいはつながりを意味します。ひとりの人のあらゆる部分---からだとこころ、こころとたましい---を結びつけ、統合していくこと。それによって、バランスのとれた、実りある人生をめざすのです。ヨガは、わたしたちを大いなるものへと結びつけます。ヨガを学ぶ人は、自らの内なる世界を知るようになります。また、自らをとりまく世界に対する気づきを与えられます。そして、生きとし生けるものすべてにあふれる、大いなる喜びに触れるのです。

ヨガのセッションは、「オーム(OM)」というマントラを唱えるところから始まります。続いて、「パタンジャリ(Patanjali)」を唱えます。「オーム」とは、永遠を表す音です。この宇宙的な響きは、わたしたちを内なるところへと導きます。それによってわたしたちは、自らの内にこのうえない幸せが満ち満ちている、ということに気づかされるのです。音の振動は、わたしたちの内に宿る、聖なるものに対する気づきを表現しています。「オーム」はア…ウ…ム…という、三つの切り離すことができない音の波からなっています。音の後に、沈黙が続きます。アの音は、マクロコスモスとミクロコスモスの源をあらわします。ウの音は、たましいの波動を、ムの音は身体を表します。身体、波動、すべての源となるところのもの、それらを越えたところに、純粋な意識が立ちあらわれるのです。純粋な意識、すなわち沈黙へと、オームは溶け出していきます。

パタンジャリは、紀元前500年から200年ごろの人であるといわれています。パタンジャリの伝説をひもとき、ヨガのマスターについて、お話ししましょう。パタンジャリは、「マハビヤサ」という書物を著しました。この本の中で、パタンジャリは、ヨガ・ダーラナについて語っています。ヨガ・ダーラナとは、たましいの鏡のことです。「マハビヤサ」に続いて、パタンジャリは「アーユルヴェーダ」を書きました。生活と健康についての本です。パタンジャリは、いくつもの原理や方法を、ひとつのヨガへと統合します。そして、196の格言からなる「ヨガ・スートラ」を著しました。今から2200年前のことです。スートラは、異なる理論と実践に分かれていた流派をひとつにまとめあげ、ヨガの集大成を実現しました。ヨガをかたちづくっているあらゆる要素をとりあげ、それらが互いにどのように結びあっているのかを明らかにしたのです。

パタンジャリによって提唱されたヨガの8つの原理について、お話ししましょう。これは「アシュタンガ・ヨガ」(ヨガの8つの柱)と呼ばれています。この8つを、たゆまず実践することによって、真なる自己への気づきをめざすのです。それが、ヨガの究極の目的です。


1. ヤマ 普遍的な倫理:暴力の否定、誠実であること、盗みを働かないこと、性欲をおさえること、物欲をおさえること。
2. ニヤマ 自らの行いを律すること:けがれなく清らかで、満ち足りていること、ヨガの学びに専念していること、質素であること、書物をひもとき、自らについて学ぶこと、しがみついているその手を放すこと。
3. アサナ さまざまなポーズを学ぶこと。
4. プラナヤマ 呼吸をコントロールすること。
5. プラティヤハーラ 自らの内側と向き合い、自らの感覚をコントロールすること。
6. ダーラナ 集中すること。
7. ディヤナ メディテーション。
8. サマディ エゴ(自我の感覚)が、メディテーションのうちへと溶け出すこと。はっきりと目覚めた意識の状態。


クラスの始まりに唱えるパタンジャリは、祈りというよりは、パタンジャリが作り上げた体系に、感謝と敬意を表する伝統的なやり方です。それを唱えることによって、わたしたちは宇宙的な意識がとてつもなく大きな広がりを持っていることに気づき、自分自身もまたその一部であることを知るのです。わたしたち自身の中に、たましいの威厳、真実、至福、沈黙、知恵が映し出されるのです。


パタンジャリを唱えます。

 ヨゲナ チタシャ パデンバ ヴァチャム
 マラム サリラシャ チャ ヴァイディヤケナ
 ヨパカロタム パヴァラム ムニナム
 パタンジャリム プラン シャリラナトスミ
 アバフ プルサカラム
 サンカ チャクラ シタリナム
 サハスラ シラサム スヴェタム
 プラナマミ パタンジャリム

(すぐに暗唱できなくても、ご心配なく。繰り返し唱えることによって、自然に覚えることができますから。)


パタンジャリの意味を教えましょう。

気高き賢者パタンジャリの前で、わたしは頭をたれる。パタンジャリは、こころの清らかさと落ち着きのためにヨガを、澄みきった純粋なことばのために文法を、すこやかなからだのために薬を与えた。パタンジャリの前に、わたしは身を低くしてひざまづく。パタンジャリは、アディセサの生まれ変わり。その上半身は人のかたち、手には巻き貝と円型の盾を持ち、1000の頭を持つコブラの冠をかぶる。ヨガのあるところには、栄えと至福と自由とがあふれる。

パタンジャリを唱えた後、アイアンガー・ヨガのアサナ(ポーズ)とプラナヤマ(呼吸)を、ラジェイの指導のもとで学びます。セッションの終わりには、数分間のメディテーションを行い、今一度「オーム」を唱えます。



BKS アイアンガーとアイアンガー・メソッドについて


BKS アイアンガーは、世界的なヨガの巨匠です。60年以上にわたり、ヨガの実践と教育に携わってきました。数えきれないほど多くの人々が、アイアンガーについてヨガを学び、世界中にアイアンガー・ヨガ・センターが設立されました。アイアンガーは、ヨガの実践と原理について、数多くの著作を著しています。『ハタヨガの真髄』、『ヨガ呼吸・瞑想百科』、『ヨガ芸術』など。BKS アイアンガーは、ヨガをやっている人たちの間では、たいへんよく知られた指導者でした。1952年、バイオリン奏者イエフディ・メヌヒンとの出会いをとおして、BKS アイアンガーは世界的に知られるようになります。メヌヒンは、ロンドン、スイス、パリなどにアイアンガーを招きました。アイアンガーは、世界各国からやってきた人々と出会い、彼らにヨガを教えたのです。
アイアンガー・メソッドは、アサナ(ポーズ)とプラナヤマ(呼吸をコントロールすること)を学ぶところから始まります。アイアンガーは、200を越える古典的なヨガ・アサナと14のプラナヤマを体系化しました。シンプルなものから、非常に難易度の高いものまで、ポーズと呼吸は、いくつもの段階にわけられています。初心者は、基本的なポーズから徐々に難しいポーズへと、無理なく、確実に進んでいくことができます。そのプロセスにおいて、わたしたちは、こころ・からだ・たましいのしなやかさ、強さ、感覚の鋭さを身につけるのです。

アイアンガー・ヨガは三つの点を特に大切にしています。第一に、まっすぐな正しい姿勢。解剖学的に裏付けられた正しい方法によって、ゆがみのないからだを作ります。正しいポーズを学べば、からだを傷つけたり、痛みが生じたりするようなことはありません。一人ひとりのからだは異なっていて、弱いところ、強いところは人それぞれです。BKS アイアンガーは、正しいポーズをするために、からだを補助する用具を開発しました。たとえば、木製のブロック、椅子、毛布、ベルト。用具を用いることによって、それぞれの人のからだに合った範囲で、ポーズを行うことができます。安全で、効果的な練習をすることができるのです。
アサナとプラナヤマが、病気の治療を行う上で効果的であることは、何百年も前から知られていました。BKS アイアンガーは、ゆがみのないからだと正しい練習方法が、ヨガの持ついやしの効果を高めることを、繰り返し述べています。アイアンガー・ヨガを続けていると、痛みが取り除かれるのです。経験豊富な指導者は、さまざまな病気(かなり重い病も含めて)の治療にあたることができます。アイアンガー・ヨガのアサナを実践するために大切なもう一つのことは、正しい順序にしたがうことです。順序よくポーズを積み重ねていくことによって、ひとつひとつの効果がパワー・アップするからです。また、持続も重要です。一つのポーズを、かなり長く保ちます。それによって、ポーズの効果がわたしたちの深いところまで行き渡るからです。


ヨガについてもっと知りたい方に、おすすめします。

BKSアイアンガー『ハタヨガの真髄』白揚社1980年
BKSアイアンガー『ヨガ呼吸・瞑想百科』白揚社1985年
BKSアイアンガー『ヨガ芸術』白揚社1987年



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